ひょっとこ踊りと鏡

活動を始めて1年半、隊は、総勢70人を超えるまでの団体に成長しました。隊員はすっかりひょっとこ踊りに魅せられ、この踊りの奥深さにのめり込んでいます。繰り返しのリズムと簡単な踊りだからこそ奥が深いのです。やはり、日本の伝統芸能は、一生涯をかけて芸を極めていくものなのでしょう。極めたと思ったら、また次の壁があり、次の段階があります。まさに人生と一緒です。

隊では、定期練習会を月に一度、第3木曜日の午後8時から中央公民館で行っています。老若男女、初心者も経験者も様々な方々が入り混じった全体練習ですので、和気あいあいとみんなで輪になって踊り楽しむことが中心です。だから、ひょっとこ踊りの芸を磨き極めていくためには、毎日の自主稽古が欠かせません。継続は力なりだと信じ、毎日、鏡を見て、手、足、首等の一つ一つの動作や体全体のバランスを確認していきます。ひょっとこ踊りは面踊りだが、ひょっとこのようにおもしろい表情ができるように、時には、持って生まれた自分の顔の筋肉を動かす稽古もします。また、中腰で壁におでこと膝をつけ、その状態で腰だけを前後に動かす稽古も大事にしています。知らない人が見たら、さぞかしびっくりすることでしょう。

ひょっとこ踊りの発祥の地、宮崎県日向市のひょっとこ夏祭りには、毎年、全国から多くの踊り手と見物人が集い賑わっています。今年、我が隊も38人で本場の祭りに初参加することができました。総勢1700人の総踊りパレードは熱気ムンムン。腰を振りながらユニークに踊るひょっとこ連に、あちこちから見物人の歓声が沸いていました。ところで、祭りには最優秀個人賞なるものがあります。審査員は見物人。見物人は実行委員会から1200円でメダルを購入し、パレード中の踊り子たちの中で、見物人が優秀だと思う踊り子にメダルを与えるという表彰制度であり、一番多くメダルをもらった踊り子が最優秀個人賞の栄誉を受けるというものです。私の息子も見物人からメダルを首にかけてもらうたびに勢いづき、絶好調の踊りとなりました。稽古でも見たことがないくらい腰振りにキレがあり、私も脱帽したぐらいです。結局、今年は32個のメダルを獲得した人が最優秀個人賞を獲得。息子は18個。とても悔しがっていました。息子を誇りに思うとともに、いい経験をさせることができたと満足しています。世の中には、上には上がいるものですね。

また、今年は縁あって、さかもと夏祭りにも出演しました。三十数戸の小さな地区の大きな手作りの夏祭りです。まさに、じいちゃんも、ばあちゃんも、とうちゃんも、かあちゃんも、にいちゃんも、ねえちゃんも、ぼっちゃんも、おじょうちゃんも、裏方から司会や出演まで全員参加の祭りです。坂本地区以外の住民のみなさんもたくさん遊びに来ていてとても賑っていました。これが、祭りの原点であり、古き良き日本の「縁日」であると実感いたしました。

さかもと夏祭りでは、七福神に仮装した団体と出演を共にすることができました。「福が来た、福が来た、笑う門に福が来た。商い繁盛、家内安全、健康長寿。」と唄い、人々の幸せを願う七福神たち。ひょっとこ踊りと相通じるものがあり、とても親近感を覚えました。出会いに感謝です。

ひょっとこ踊りの両手の動きには意味があります。前方に突き出した手には、これからの行くべき自分の道を示しているという意味と、ひじを曲げ手のひらを自分の顔の方に向けた手には、これまでの自分の生きてきた姿を映す鏡という意味です。ひょっとこ踊りを通じてつながるたくさんの御縁に感謝し、今日も鏡の中の自分を見ていこうと思います。ひょっとこ踊りの最高の型を追及して少しでも上達できるように。「あたにゃ、面は入らんばい。」そう言っていただくとなぜかうれしゅうございます。面踊りの踊り子の私だが、鏡を見ながら、ありのままに自分や家族や地域と向き合い、一芸を極めていきたいと思います。